★全国のコミュニティビジネス先進事例 ★

アートでつなぐまち・・・カジュ・アート・スペース　

　鎌倉の旧市街に残されていた古民家が、地域の小さな文化施設「カジュ・アート・スペース」に生まれ変わりました。文化教室の運営、アート系イベント企画などの事業を行っています。アートを通しての住民の交流の場からさまざまな文化・芸術の催しが開かれ、さらにアートでのまちおこし活動も始まっています。　　　　　　　　　　　　　

　染織家のたなか牧子さんが、織機6台をおける自分の工房を開くための場所探しで偶然見つけた鎌倉旧市街の古い空家。庭のカエデの古木に一目ぼれした。すぐに178坪の敷地に築70年38坪の古民家を借りたが、工房だけでは維持が難しい。残りのスペースを時間貸しの教室にしようと、布団部屋を防音室に改造し、ピアノ教室など幾つかの文化教室を開いた。1997年、カジュ・アート・スペースが誕生した。
　古民家の良さが残っているカジュに様々な個性を持つ人が出入りし人間関係の交錯が面白かった。時間帯が異なる教室の生徒同士をつなげようとカジュ通信を発行。カジュに来る人たちの交流から展示会、音楽会、講演会、カジュ祭など多くの催しが開かれ、アートを通じた出会いの場、創作の場は地域の小さな文化施設になっていった。
　たなかさんの活動はカジュの敷地内から次第に鎌倉のまちへと広がっている。市内のアート系のイベント企画やコーディネートで実績を重ねているが、今年は4月下旬のカジュ祭をはさんで1週間「鎌倉路地フェスタ」を行う。鎌倉の美しい街なみ保全活動の1つとして、近隣のカフェ、店舗、ギャラリーなどがアートでつながっていき、10回目を迎えるカジュ祭がより地域に密着する。
アートは国境を越えていく。2005年にドイツのハンブルグ郊外で開催された「トラーベ・アート・フェスティバル2005」にカジュから7名のアーティストが参加した。同様のフェスティバルを日本でもという企画がカジュを中心にして始まろうとしている。地方都市が国境を越えてグローバルにつながっていったら、とたなかさんは思う。「変化の大きな時代には、小さな単位のほうが動きが早い。東京を経由せずに地方のコアが大きくゆるやかにつながっていくほうがいいのです」

手織り・手染め・手紡ぎ教室

たなかさんの造形工房。草花で染めた糸や布で創作した作品は「花樹ブランド」として鎌倉市内の協力店で展示即売されている。

貸しスペースの運営

10帖洋室と6帖和室、防音ピアノ室を時間貸し 。各種文化教室、展示会、サークル活動などに利用されている。

開催中の文化教室・・・染織教室、こども造形教室、ピアノ教室、ワインセミナー、琴・三弦教室、身体均整法、ヴォーカル教室、絵画教室、書道教室、日本語教室、建築相談など

カジュ通信の発行

カジュに集まる人たちの交流のために始めた通信がアートと生活の地域情報誌に発展。年4回、約1000部を発行。通信の一部は鎌倉市内の十数店舗に置かれている。

カジュ祭、ワークショップ、講演会、音楽会など

カジュ祭りは毎年春に行われる文化祭。
子育て中の若い母親にアートを楽しんでもらうために、ボランティアの協力を得て託児付のイベントが多い。

アート系イベント企画

コンサート、ライブ、映画祭など鎌倉を中心にイベントの企画･コーディネート・運営

NPO活動もやっています

「親子で楽しむチャリティコンサート」
「近藤等則　in 浄妙寺」の企画など　　　

《トラーベ・アート・フェスティバル2005》参加アーティストの作品

Joy.Y.Suzuki (ガラス)　　　　　 たなか牧子(染織）　　　　のむらあずさ ( 帽子・染色 )　　　 エサシトモコ(現代美術造形）

　    カジュアートスペースには教室経営部門と NPO（非営利活動）部門があり、それぞれの委員会は独立
  会計だ。カジュの活動を支えるカジュ・友の会員は現在72名、4月のカジュ祭までに会員200名を目指し
　ている。NPO活動をになうボランティアは 地域への貢献度の高い催しに参加している。

　  「人を楽しませてなんぼがアーティストです」とたなかさんは明るいが、アートとビジネスの両立はとても難し
   い。1つの助成金を得るためにたなかさんは17の申請書を出したこともある。「大儲けには縁がないが、周り
   にめんどくさ好きが多くて、楽しいから続けています。でも、これからはアートマネジメント専門職がもっと必
   要です」　アートのわかる実務家とアーティストがともにマネジメントを学ぶ機会が増えることを、たなかさん
    は願っている。

●概 要