|
畑に幟が立つとお客さんが集まってきます
ジュース用の甘いニンジンだよ
駅のアナウンスを聞きながら育つ冬野菜
|
駅の近くの畑で直売所
JR天王台駅前にあるスポーツ施設の隣に約2ヘクタールの野菜畑がある。畑に週3回野菜直売の赤い幟が立ち、家族で取立ての野菜を売っているのが湯下(ゆげ)公一さんだ。お客の求めで畑まで野菜を取りに走ることも度々、これで儲かるのかと思うくらい顧客サービスに気を配っている。
40代に入ったばかりの農家湯下さんの耕地面積は5.5ヘクタール。 作付け面積は米3、野菜7の割合で、野菜はニンジン、ブロッコリー、白菜、大根、小松菜、ホウレンソウなど。我孫子では小規模の農家である。
主力の米は自販であるが、野菜は畑の直売所のほかに大手スーパーと契約し、主に無選別の甘い冬ニンジンを納品している。また、地元の「地産地消」定期即売会や大型マンションの農産物特売日でも野菜類を販売している。
天王台駅近くの直売所では、12〜2月はニンジン、大根など、7月はトウモロコシを売っている。直売日の早朝に畑に立つ幟を見てやってくる固定客が多い。駅の近くなので出荷作業の最中に通行人に声をかけられることが多く、4年前にそこでとれたばかりのトウモロコシを売る直売所を始めた。糖度が高い自慢のトウモロコシは評判がいい。
「収益はさほど出ないけれど、それまで近くの人や通行人から出ていた畑から土ぼこりが立つとか臭いといったクレームは減りました。農業についての理解が増えたようです」と湯下さんは話す。
|
|
クオリティの高い生産物を求めて 農業に対する自分の考えからチャレンジを続けてきたが、失敗の連続だったと湯下さんは明るく語る。 以前出荷していた近隣の公設市場では、個性ある、エンドユーザーが喜ぶ商品をと企画提案したが却下された。
海水を使い栽培すると米が甘くなると聞き、仲間とトラック2台を連ね銚子まで行き4トンの海水を持ち帰った。最初の年は実験用の田んぼの水に少しずつ海水を混ぜて稲を育てたところ、米の味が甘くなったようだ。気をよくして次の年はもっと効率よくと上からも海水をかけたところ、塩害にあい稲はほぼ全滅。家族の反対を押し切れず、実験継続は断念した。
これまでは失敗例が多かったが、納品している大手スーパーや直売所では自分の企画で生産した商品を売ることができ、この2、3年農業が面白くなってきたという。今年の新規商品として、取り寄せた丹波の黒豆を自家栽培し枝豆で売る予定だ。
ビジネスとしての農業
実家が自営業なので何とか暮らしていけるが、農業の収支は赤字を出さない程度であり、農家としての経営は難しい。
鮮度、味、安全性を兼ね備えたクオリティの高いものを作って売ることが湯下さんの目標。味の追求にこだわっているが、県の農家支援団体<農林振興センー>でも栽培方法と味との科学的因果関係の立証ができないので自分の味覚に頼るしかない。ほかにも販売ルート、規模、人手と課題は多い。当分模索の段階が続きそうだが、大手スーパーのバイヤーとのつながりができ、販路の問題には光が見えてきた。 |
駅のそばに約20アールの野菜畑
あびこ型「地産地消」推進協議会の定期即売会
大手スーパーに向けての出荷作業
|