【司会】 それでは定刻となりましたので、ただいまから午後の部の方を開始させていただきたいと思います。
午後、最初のプログラムでございますけれども、日頃よりそれぞれの地域で高齢者の学び、あるいはその成果を生かした社会参加を促進し、地域全体の活性化にもつなげているような具体的な取組事例について、3名の方から御紹介を頂きたいというふうに考えております。
まずは、NPO法人ACOBAまほろば事業部長の杉原秀雄様による事例発表を行います。
簡単ではございますけれども、杉原様の経歴を御紹介させていただきます。杉原様は、現役時代は主にデジタル通信に関するシステム開発、あるいはその事業の分野に関わってこられました。会社員引退後は、2011年から現在のNPO法人ACOBAに参加されまして、福祉関係の評価事業ですとかNPOへの融資促進事業に携われた後、昨年からいきいき生活倶楽部まほろばの活動に関わっておられます。また、趣味の方はクラシックギター、スキー、ゴルフ、オカリナ製作という形で非常に多趣味で楽しまれておりまして、今年からは社交ダンスの方も始められているというふうに聞いております。
本日は、「学びから実践へ 緒についた、(一人暮らし)高齢者支援事業『いきいき生活倶楽部 まほろば』の歩み」ということをテーマにいたしまして、事例発表の方をしていただきます。
それでは、杉原様、よろしくお願いいたします。
【杉原】 NPO法人ACOBAの杉原と申します。午前中の清家先生のお話によりますと、もう20年前には死んでなきゃいけないんですけれども、まだ生き長らえております。
今日のお話は、学びから実践へというまほろばの歩みなんですけれども、私の所属しているNPOを御紹介します。ACOBAというNPO法人で、ちょっと奇妙な響きがあるかもしれませんが、これはAbiko Community Business Association、これの頭文字をとった普通のNPO法人です。どういう仕事をしているかといいますと、自前の事業は余り持っていないんですけれども、千葉県の施設の指定管理ですとか、あるいは福祉介護の部分で施設の第三者評価とか、それから地域密着型の事業所の外部評価、こういったことをやっております。そのほかにもいろんな事業をやっているんですが、そういう意味では、割合幅広い領域をカバーしているということで、幅広い経験を持ったNPOだというふうに思います。まほろばは、その中の一つの事業部ということでございます。
そもそもまほろばはどうしてできたかということについてお話ししますと、実は平成23年に我孫子市の地域支え合い体制づくり事業というものがありまして、それに応募して、ACOBAが受託したと。これは、一人暮らしの高齢者をいつまでも元気で生き生きと暮らしていただくためのサポートをする、そういうサポーターを養成する講座です。講座が終わった後は、ACOBAが責任を持ってサポーターの活躍する場所を提供しなさいと、そういう条件付の事業でありました。
この講座の中身ですけれども、小さくて読めないと思いますけれども、わずか2か月足らずの間に180時間ぐらいの実習と講義があるという、非常にタイトな講座です。集まった二十数名のサポーター候補の方は非常に熱心で、全員9割以上の出席率で、落後者が一人もいなかったというのが語り草になっております
事業が終わりまして、生活倶楽部という事業を立ち上げるという話になったわけですけれども、そのときに、まず名前から決めないといけない。事業理念のようなものも必要だろうということになりました。名前はいろいろ紆余曲折(うよきょくせつ)あったんですけれども、「ACOBA」と「まほろば」というのは母音の並びが同じなんですね。言いやすいということもあります。そういったこともあって、まほろばという名前にしています。
それから、事業理念としては、会員制クラブとして、主として、一人暮らしの高齢者が安心して楽しい生活を支援することを通じて社会に貢献するとか、ボランティア精神に支えられたサポーターも地域社会の中に新しい生きがいを見つける、こういったような理念があります。これは事業理念とは言えない理念で、心構えみたいなものです。三つ目が、利用者、サポーターともにACOBAを核として、この倶楽部がまほろばであり続ける。ここら辺が事業理念風で、NPOの事業性というのは、継続性と同じなんですね。ですから、継続できるような団体であり続けたいというのが理念です。
事業構想としては、余り目先の動きではなくて数年先、先ほどから話がありますような超高齢社会が訪れるような時期に、我々のポジションがしっかり確保できるような、そういう活動をしていこうということで、会員制のクラブですから、One Stop Serviceということで、とりあえずまほろばに入っておれば安心していられると、そういった事業体にしていきたいなというふうなことを考えてスタートしています。
スタートしたわけですけれども、なかなか難しいんですね、こういう事業というのは。会員の方は、基本的に自立されていて元気な方が対象ですから、支援するとはいっても、支援が必要ない方がほとんどなんですね。一方、事業というところから考えますと、支援しないと事業にならない。そういうジレンマがありまして、なかなかうまくいかない。サポーターの方は、福祉の分野で貢献したいという意識が一番強いんですけれども、一方、有償ボランティアとしてある程度の収入も期待したい、そういう側面も持っています。我々コーディネーターとしては、そういうサポーターの望みも聞きながら、会員にサービスを提供していくというミッションを負っているわけですけれども、少し事業をやってみた段階では、なかなか有償ボランティアにつながるような活動はできないんですね。いつまでも有償ボランティア、あるいは支援ということにこだわっていますと、なかなか事業ができない。我々自身も、本当に一人暮らしの高齢者にとって必要な支援とは何なんだと、何が必要なんだということで、十分理解しないまま有償ボランティアですとか事業という話をしてきたんですけれども、実はそこに一番大事な問題があるんじゃないかということに気が付きまして、ちょっと視点を変えてみようということを考えました。それがここにありますような、元気な高齢者が街を救う、こういう視点でものを考えたらどうだろうと。高齢者が家に引きこもっているような社会ですと、若者が逃げ出す、シャッター街になってしまう。一方、元気な高齢者が街をかっ歩しているような社会ですと、若者に起業のチャンスがあるだろう、そういうことで、我々のやっている活動は、とにかく元気な高齢者の比率を高める活動だ、そういうふうな理解の仕方をして、しばらくやってみてはどうだろう。高齢者というのは、大体、若者のエネルギーを吸い取って、社会のお荷物みたいな言い方をよくされるんですけれども、実はそうではなくて、全く逆に、ずっとではないと思いますけれども、しばらくの間は元気な高齢者のエネルギーを逆に若者が吸収することで社会が活性化する、そういう発想で取り組んでみてはどうだろうということで、当面の活動方針を「支え合って 青春の感動を再び!」という、ちょっと大げさなスローガンで再スタートをしようということにしています。こういうチラシをつくったりして、ここに「青春の感動を再び!」ということを書いていますけれども、このチラシは余り評判よくなくて、何をやるのかよく分からんと、青春の感動って何だというようなことがあって、いろいろもめていますけれども、私はこれでいきたいなと思っています。
何でそうかといいますと、ちょっと頭にひらめいたのは、ノーベル化学賞ですね。2010年、たしか鈴木さんと根岸さんでしたか、ノーベル化学賞を受賞しています。その研究テーマがクロスカップリングという、触媒でノーベル賞をもらったというのが頭にありまして、よく考えてみると、まほろばの事業も、もしかして触媒みたいな仕事かなというふうに思い出して、ちょっとアナロジーを考えてみました。
例えば、ここにaとありますけれども、これを日常的な生活要素とします。もし何もなければ、このaはずっとaのままでいるか、あるいはしぼんでしまう。これに何か非日常的な生活要素のXというものが加わると、aの中で反応が起きてAになってしまう。これは高齢者が活性化したという意味なんですけども、こういう現象があるんではないか。1年ぐらいやって、これは正しいんじゃないか。見ていますと、Xiを提供することによってaがAになるというようなことを観察していますので、もしかして、こういうことであれば、サポーターの仕事というのは優れたX、何か非日常的な生活要素を提供すること、そのためにはサポーターの人たちは自己研さんもしないといけないし、学びも継続していかないといけないということで、自分たちの活動をオーソライズできるんではないか。
一方、コーディネーターの我々の仕事は何だということになりますと、むしろ我々は、単にXが加われば、aがAになるというだけの話ではなくて、Xiの組合せですね、どういうXiを組み合わせればより大きなAになるか、あるいはAjと書いていますけども、個人によって変わるだろうと。この利用者の方には、どういうXiの組合せが最適かというようなことを考えていくのが、我々の仕事だというふうに考えています。
こういうふうに考えていきますと、当初、「青春の感動を再び!」というふうに言いましたけれども、そういうお遊びの中から、もしかしたら事業性が見つかるのではないかというふうなことも今考えています。当初考えた活動のイメージは、お楽しみ企画と暮らしの安心企画という二つに分けて、ボランティア的なお遊び、お楽しみをやっていく中で利用者と信頼関係を作って、有償ボランティア的な活動につなげていけるんじゃないかというふうに考えたんですけども、今は、むしろ、こういうことはもちろんあっていいんですけれども、このお楽しみの中にも、先ほど言いましたような、サービスの提供の仕方によっては事業になっていく、そういう要素があるのではないかというふうに考えています。
今までどういうことをやってきたかということを簡単に御紹介したいと思います。これは、オープニングコンサートということで、まほろばを発足するときにやったコンサートです。ここは、着物を着たきれいなサポーターがおもてなしをしています。
それから、電気を上手に使いましょうという講座をやりました。これは、自然エネルギーが騒がれているときに、自然エネルギーだ、原子力だ、化石燃料だという前に、我々自身、電気についてもっと知る必要があるんではないか、電気を上手に使うということも大事ではないか、こういったことを話し合いました。
それから、新聞ですね、まほろば通信というのを出していますけれども、これもただインタビューして会員を紹介していくということもありますけれども、将来的には、例えば地域で納得できるレストランを紹介していくとか、そのためには、ミシュランじゃないんですけれども、まほろば基準というものを作ろうと。まほろば基準に合ったレストラン、つまり高齢者が行って安心できるレストランの条件というのは幾つもあるんじゃないか、そういったものを満たしたレストランを紹介していく、こういった活動も面白いな。
それから、ちょっとチャットねっとと書いていますけれども、まほろばの会員とサポーターの懇親会。これもただチャットするだけじゃなくて、手品をやったり、いろんな楽器の演奏をやったり、そういった楽しみの仕方をしていこうと。
歌声喫茶は、割合定着しております。毎月定期的にやっています。
意外と人気があったのが社交ダンスです。70、80になって初めてダンスを始めてみようという人や、自分とはダンスなんて関係ないと思っていた人も、やってみると意外と面白い。私もその一人なんですけども、結構人気がある。こういう活動の中から、会員がどんどん増えているというような状況です。
それから、手賀沼遊覧といって、屋形船をチャーターして、手賀沼から我孫子市を見てみようというような活動もやっています。これはサポーターの説明と手作り料理などで楽しんでいただいているんですが、今日も見えていますけども、このサポーターは1年間一生懸命勉強して、我孫子市のガイド認定資格を取ってうんちくを傾けるというようなことで、非常に利用した方からは評判がよかった、毎年やってくれというふうに言われています。
それから、冬になると、我孫子にはおびただしい野鳥が飛んでくるんですけれども、野鳥の会の会長さんをお招きして説明してもらう。オスプレイも見られるというような話があります。
バス旅行もいろいろやっていますが、例えば鵜の岬にバス旅行に行ったときには、景色だけではつまらないので、原発も見てみようということで、お願いして原発の中で説明を受けたり、ちょっとひと味違うバス旅行をやろうというようなことも心掛けています。
それから、芋ほり会ですね。こういったこともやっています。
最後になりますけれども、やはり学びが大事だということで、昨年はサポーターレベルアップ講座というのをやりました。これは千葉県の御支援を得てやっている講座です。7回ぐらいやりましたけれども、今年は、統一テーマとして「人生100年時代のまちづくりと健康づくり」というようなことで、東京大学の高齢社会総合研究機構の先生から基調講演を頂いて取り組んでいこうということをやっています。
今後の展開ですけれども、こういった私どもやっているようなmini-coreというか、小さな集まりが市内、あるいは地域を見るとたくさんあります。こういった地域の方々とどうやって有機的な関係を作っていくかということが今後の課題かなと。あるいは連携したり、情報交換したり、情報交換によるものまねとか、情報交換といっても、何とか協議会とか会議とか大げさなものじゃなくて、例えば市役所のホームページの片隅に置かれたハブだったり、ストレージだったり、そういったもので情報交換をやっていけばいいのかなというようなことを考えています。
大変簡単で、時間がないのではしょった部分もありますけれども、御清聴ありがとうございました。